あの夜空の輝く星に、願いを込めて。

願いの届け方を忘れてしまった「あなた」に、私はそっと耳打ちをする。他の誰にも、聞かれないように。

劇場版「サウロの回心」は感動の超大作!全米が泣いた!私も泣いた!あなたも泣いて!!!!!!!!!!!!

もうずいぶん昔のことだから、正確な歴史資料は残っていないんだけど、今から二千年くらい前にイエスとサウロって人がいたらしいんだ。

エスって人は「自分は神だ」って言ってまわってたら、警察につかまって死刑にされて死んだ人だよ。

まあイエスって人はこのお話の始まるずっと前にもう死んじゃってるから、この話とは大して関係はないんだ。

サウロの方が大事だからサウロの説明の方をちゃんと聞いて欲しい。

サウロはイエスのことを憎んでいた人だよ。

サウロって人は世界で一番頭が良かったんだよ。

そして頭が良いだけじゃなくて世界で一番正義感の強い人だったんだ。

いつも自分じゃなくて他人のためを思える人だったんだ。

いつも真剣に生きてる人だったんだ。

世界で一番真剣に生きている人だったんだ。

宗教に一番真剣に取り組んでる人だったんだ。

神について一番真剣に考えている人だったんだ。

だから、だから、だから。

「自分は神だ」なんていう人間が許せなかったんだ。

「自分は神だ」なんていう人間を信じる人間たちが許せなかったんだ。

この世界で誰よりもイエスを憎んでいたんだ。

エスを憎み過ぎて、心を病んでしまうほど、イエスを憎んでいたんだ。

心を病み過ぎて、身体もボロボロになり、目が見えなくなってしまうほどイエスを憎んでいたんだ。

本当にひどく病んでしまって、ベッドで伏せっていたら、イエスの弟子が街に来たらしい。

心も身体もボロボロだけど、せめて文句の一つでも言ってやらなければいけないと思って無理をして起きて、イエスの弟子に会いに行ったんだ。

そしたらイエスの弟子はサウロの姿を見て、言ったんだ。

「あなたはイエスを憎み過ぎて、心も身体もボロボロになっている。私は、私たちは、私たちの師イエスは、神であるイエスは、あなたを癒したい、あなたに愛を与えたい。」って。

そんなことを言われたから、サウロは思わず泣いてしまったんだ。

サウロのいままでの人生でなかったほど泣いたんだ。

泣いて、泣いて、泣いて。

気が付いたらウソみたいに身体が軽くなっていた。

目も治っていた。

まるで「最初から病気なんてなかった」みたいに。

サウロは名前をパウロに改め、「イエス」の弟子になることにした。

いや「サウロ」は死んでしまったんだ。

死んでパウロに生まれ変わったんだ。

エスを神と認めた、いやイエスこそ神だと、「決めた」んだ。

世界で一番イエスを憎んだサウロは、世界で一番イエスを愛したパウロになった。

世界で一番憎んだ「から」、世界で一番愛したんだ。

わかるだろ?

私は思わず泣いてしまった。

あなたにも泣いて欲しい。

泣くことは神が人に与えた愛だ。

アーメン。

このお話の教訓はわかるよね?

「真剣に生きるってことは、とてつもなく素晴らしいことだ。」ってことだよ。

言うまでもなかったね。

私はあなたにも真剣に生きて欲しい。

そう「サウロ」のように。